作業所は自主製品をどう売っているのか ─ 引佐草の根作業所(4)

「障害者の働く現場シリーズ」第1弾は静岡県浜松市にある「草の根作業所」様のインタビューをお聴きいただいています。前回は草の根作業所で製作した製品の開発や数々の受賞歴についてお聞きしましたが、今回のインタビューはそれらの製品の販路について、田中施設長にお話いただいています。

「良いものを作れば売れるわけではない」のは作業所も同じ

「ものづくり」は、日本の製造業をポジティブに捉えた言葉で、日本人なら誰もが知っていると思います。職人技や匠の技術は世界に誇るべきものであり、それらを象徴するようなイメージが思い浮かぶでしょう。

ただ、いくら丁寧に時間をかけて良いものを作ったとしても、それを必要とする人たちに買ってもらえなければ、商品としての価値はゼロとなってしまうのが今の経済社会です。心を込めて作ったのに売れ残ってしまった商品の山を見ながら途方に暮れている経営者も少なくありません。

また、日本の製造業の「技(わざ)」が日本人だけのものかといえばそんなことはなく、1980年代頃から日本の製造業の下請けになった中国や韓国は、それらの技術を身に付けていくうちに、自力で生産できてしまうようになってしまいました。作る側の「匠」や「職人」といった聖域は確かにあるのかもしれませんが、使う側は品物として多少劣悪だったとしても、同等の機能でしかも値段が安ければ、そちらになびきます。さらにインターネットで世界中のお店が近しい存在となった現在、日本の製造業はどう市場で戦っていけば良いのか、試行錯誤しています。

今回のインタビューでも田中施設長が冒頭で「難しい」と苦しそうに話されていますが、草の根作業所が作っている縫製品も、ふなちゃが「ゴールデングラブ賞」に譬えた華々しい受賞歴が多くあるものの、どうやって売るかについては普通の小売業と同じように悩まれているようです。

表彰される田中施設長や利用者の方々

商品開発できてもマーケティング施策まで手がまわらない

縫製品は草の根作業所だけが作っているわけではなく、多くの一般企業で似たような品物を製造・販売しています。たとえそれが地元の遠州綿紬を利用したものであっても、素材を購入しさえすれば海外でも縫製可能なわけですから、結果として草の根作業所は数多くの一般企業と同じ土俵で戦わざるを得ない状況です。

そういう市場において、一般企業は製品開発のスキル以外に、マーケティングという武器を持っています。新製品を開発すればそれをテストマーケティングしながら販売戦略を立て、沢山売るための施策に資金投入するのが当然のプロセスです。

一方、前回の番組でふなちゃのコメントにありましたが、作業所は製品開発できたとしても、マーケティングの施策を打つことまでは難しいようです。その時点で、どんなに素晴らしい製品であったとしても、市場にアピールできていない作業所の商品が同じジャンルで勝てるという確立は極めて低くなります。

一方、商品が持っている「背景」で消費者に選ばれる時代がくる予感

しかしながら、ソーシャルに対する人々の意識は確実に高まっています。民間のテレビやラジオでも「SDGs」という言葉を耳にするようになりました。これらの取り組みはすぐに答えがでるものではないので、経済にどんな好影響を及ぼせるかはまだ試行錯誤の段階ですが、各企業が単体で行っていたCSR活動と様相が異なっており、国レベル、世界レベルでの活動へ広がっています。投資の分野ですら環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとった「ESG」という視点が導入されています。

今の世の中はモノで溢れかえっており、「捨てる」という行為すら美徳みたいに言われる時代です。そんな中、お店に行って横並びになった商品を選ぶ際、値段や機能は商品選びの要因にはならず、むしろその商品のもっている背景で選ばれる時代がくる気がしています。逆に環境や社会に力を入れていない企業の商品は、店頭に並べてもらえなくなるなんてことも起きるかもしれません。

作業所のビジネスモデルは、商品の製造販売だけでなく、障害者雇用という新しい価値観を生み出すという大きなミッションがあります。そういった背景がこれからの市場で積極的に受け入れられることを期待しながら、今回の番組でどうしたら作業所の製品が売れるようになるか、ふなちゃと一緒に検討していますので、ぜひお聴きください。

今回の「行間ラジオ」は・・・

  • 販路は難しい・・・
  • オール静岡ベストコミュニティからの紹介が多い
  • 道の駅やホテルで委託販売
  • イベント参加で自分たちで販売
  • インターネット上での独自販売は今後の課題

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